第五章
ロイは怪訝そうに、玄関の扉をそっと開いた。
いつの間にか雨足は弱まってきている。しとしとと灰色の空から降り注ぐ雨の中で、何故かはしゃぐ声が聞こえた。ロイはその光景に目を丸くする。
「くらえっ!」
「わ、……やったなー!」
お互い泥だらけになりながら、ぬかるんだ地面や水溜まりの上を走り、泥や水が跳ねるのも気にせず、さながら子供のように。マルスとカービィは無邪気に笑い合って遊んでいた。見惚れて、というより呆気にとられ、ロイは立ち尽くす。
「やっぱり! 二人だけずるいでしゅー!」
「あっ! ちょい待ってえや!」
口々に飛び出していくリムとドンキー。
「……よし! 私もジャージに着替えてこよ!」
「ぴ、ピーチったら待ってください!」
その様子があまりにも楽しそうに見えたのか、早速ドレスを着替えて突入しようと自室へ向かったピーチをゼルダが慌てて追いかける。
「俺たちもいっちょ童心にかえってみるか!」
「ちょっ、僕を巻き込まないでよぉぉ!」
感化されてルイージの腕を掴み、外へと飛び出すマリオ。
「洗濯物がてんこ盛り確定ですぅ……」
ヨッシーははあ、と溜め息。
「……行かないのかい?」
ロイははっとラディスを振り返った。
「今なら、彼の本音を聞けるかもしれないよ」