第一章
暫し、沈黙が訪れた。
ラディスは冷蔵庫と向き合い、サムスに背を向けていたが、やがて振り返ると。
「無駄なんかじゃないさ」
そう、口を開いた。
「今ここに居る、この瞬間が奇跡なんだ」
サムスはきょとんとして。
「出会いも。だから、今を生きている皆と楽しく笑って過ごしたいんだ」
ラディスは微笑を浮かべる。
「俺も、後悔だけはしたくないから」
――変わった人。
「……そうね」
だけど、それ以上に面白い人。
納得して心を開いた自分がいるように、彼なら出来るかもしれない。今はばらばらである皆の壁を砕き、その手を引いて――
「でも、お酒は駄目よ」
「う……最近の子供は何かと手厳しいな」
「それって大人が悪いのよ」
つんとした態度をとるサムスに、がっくりと肩を落とすラディス。
なあ、ルーティ。
さすがの父さんでも、始まりはやっぱり、上手くいかないみたいだよ。