第五章
「……どーも」
ハンカチで手を拭きながら洗面所から出てくると、壁に背中を預けてあいつが待ち構えていた。ロイは一度視線を遣ったが、無視。そのまま通り過ぎようとするも、
「はいストップ」
がし、と腕を掴まれて。
「……何だよ」
「こっち」
ぐいと引かれればロイは目を丸くした。どうやらこいつは珍しいことに、マルスではなく自分に用事があるらしい。……とはいえ、ただ黙っているわけもなく。
「っ離せよ!」
「やだ」
「話ならここですればいいだろ!」
「それも却下」
と、こんな具合にやり取りしながら。
ばたん、と勢いよく閉まる扉。
ようやく解放されたかと思えばカービィは扉に背を預けてから後ろ手で鍵をかけた。何を仕掛けるつもりだろう。警戒して距離を取るロイ。
「……別に、取って食いはしないよ」
カービィは腕を組んで見つめる。
「あんたに話してもらおうと思ってさ」
「何をだよ」
「――半年前、だったかな」
ぎく。心臓が跳ねる。
「このまま隠し通せるとでも?」
カービィはすっと腕を解く。