第五章
マルスが立ち去った後で、一同は緊張の糸が解けたのか一斉に息を吐き出した。
「ったく、ヒヤヒヤさせやがって……」
「ああいう対応は心臓に悪いよ、カービィ」
マリオはただ眺めているだけで汗をかいてしまったのか、一度帽子を脱ぐとそれで自らを扇いだ。その隣でルイージは苦笑気味に自分の胸に手を添えて。
「さすがに最後のは余計だったな」
「冗談でも程々にしろ」
フォックスとユウが口々に言うと、カービィはその表情に影を落とした。
「……本気だよ?」
ぽつりと返して、にやり。
――誰もがぞっとしたことだろう。振り返ったカービィは何故かにっこりと笑っていた。そしてもう一度、前に向き直りそこで立ち尽くすロイの存在に気付く。
「なんだ。まだいたんだ」
ロイは応えなかった。ふいと目を逸らして、それから背中を向ける。
「……まるで取り巻きみたいにさ。なんで協力してんの?」
が、今度も返事はなかった。しかし一瞬躊躇いを見せてマルスを追いかけ走り去っていくロイの背中を長く見つめてから、カービィはルイージを振り返る。
「あいつのこと、何か分かった?」
「ご心配なく」
さすがメンバー随一の頭脳派。期待は裏切らなかった。
「ロイ・フェレ。フェレ家の公子で、若くして騎士団を率いている」
「ふぅん。一応はお偉いさんの類いなんだ」
「どうにも訳ありってご様子でね」
成る程。カービィはニィ、と口角を吊り上げる。
「ちょいと揺すってみますか――」