第五章
――口だけは達者、ね。
「いやああぁあ!?」
竜に指示を出すガノンドロフは最前列で仁王立ち、その後ろでクッパは呑気にも胡座を組んで大欠伸。さすが魔王様と言わんばかりなのに、一方では。
「ひっ、あわ、落ちる落ちる落ちるううっ!」
ラディスの背中にしがみつき、悲鳴を上げるマルス。
「ちょ、落ち着けって!」
「騒々しい奴だ。もうすぐ目的地の上空だぞ」
そのマルスの後ろで慌てふためくロイに、クッパは溜め息。ラディスが試しに覗き込んでみると、確かに、五分もかからない内に森が見えてきていた。
「で、どうするのだ?」
「まずはあの森の周辺に降りて」
「いいっ、今、こここ高度がああ!」
「面倒な。森ごと焼き払ってしまえばいいものを」
「それはちょっと」
ラディスは苦笑いを浮かべながら振り返る。
「……大丈夫かい?」
マルスはというと、この状態では憎まれ口も叩けないのかラディスの腰に腕を回して抱き付き、背中に顔を埋めたまま離れない。ふるふると首を横に振って。
こうして見ている限りでは、彼も本気で嫌ってくれているというわけでもなさそうだ。そうでなければ後ろのロイを頼りにしていただろうし……、何となく安心感を覚えつつ、ラディスは彼を落ち着かせるべく髪にそっと手を伸ばした。
「ほら、顔を上げて」
優しく頭を撫でてやりながら、声をかける。
「怖くないから」
その声に誘われるようにしてマルスはゆっくりと顔を上げた。濡れた瞳は普段よりか弱々しく、ラディスを見つめる。だが次第に我を取り戻していき、そして。
「僕にッ触るなああ!」
あっ。
「うわああぁあっ!?」
「ラディス!」
「え、――ちょっとぉ!?」
……今のは決してわざとじゃなかったと願いたい。