第五章
沈黙が訪れる。
ラディスはというと、声を上げるのさえ忘れてぽかんと口を半開きにして固まっていた。……当然のことながら、こんなことを言われたのは初めてである。
「おまっ、なに言ってんだよ!」
ようやく口を開けたのはマリオである。
「売り物じゃねえんだぞ、こっちは!」
「に、兄さん」
踏み出そうとしたところをルイージがすかさず袖を引いて止める。
「聞こえてる?」
マルスは視線を外さない。
「……本気、なのか」
「ラディスっ」
小さく声を洩らすマリオにルイージはもう一度袖を引いた。マルスはくすっと笑みをこぼすと、組んでいた腕を解き、右手の甲を腰に当てつつ首を傾げて。
「面倒だと思わないかい? 妙な壁を作って意地を張る連中と肩を並べていたって疲れるだけだろう?……なら、いっそのこと手放しちゃえばいいじゃないか」
少年のそれは紛れもなく。
「幸せは保証するよ。お兄さん?」
悪魔の囁き――
「……、」
ラディスは何故か黙り込んでいた。
まさか、答えを迷っているのだろうか。密かに目を見張らせていたカービィにも次第に不安が募っていく。冷たい風が吹き抜けた時、ラディスは遂に口を開いた。