第五章
……え?
「ほら、ハンカチで拭いて」
「すまないな」
「ええぇえええ!?」
マルスとロイは揃って声を上げた。
「あんなのが!?」
続けて、マルスは信じられないといった様子で指をさす。
「……へ? 俺?」
地べたに腰を下ろした姿勢のまま、ルイージから受け取ったハンカチで鼻血を優しく拭いながら、突然の大声に鼻声で疑問符を浮かべるラディス。
「確かに、レイアーゼの誇る特殊防衛部隊のまとめ役と語るにはまだまだぬるい男だが、信頼性はある。だからこそ、彼も変わった接待だったのだろう」
マスターは立ち上がって。
「っ……」
マルスは暫く言葉を失っていたが、早足でその場を離れた。向かう先には――ラディスがきょとんとしている。マルスは目の前まで来て立ち止まると、
「君、本当にリーダー?」
「はっはい」
見た限り、あまりその自覚はしていないようだ。
「そう。……じゃあ」
マルスは腕を組んで見下ろす。
「売ってよ」
「え?」
「この部隊。言い値で買うから、僕に売ってよ」