第五章
ガノンドロフは目を細めた。
一切の気配も寄越さず彼ら二人に接近し、よもや一瞬で生成した剣を使うことであれを止めただと? それもあの男、見たところ魔術を使ったような様子もない……
「……、」
やはりあの男、何か裏があるようだ。
少し前に小耳に挟んだ、クレシスという男の怪我が“跡形もなく”消え去ったという話も気になる。……マスターが手に持っていた剣はたちまち薄い水色の光に包み込まれてしまうと、粒子となって風に吹かれ消えた。マスターは振り返って。
「お待ちしておりました。アリティア国王子、マルス」
右手を胸に。その場に跪きそう唱えた。
「うちの者が無礼を働いたこと、どうかお許しを」
マスターの視線を受けて、カービィはふいと顔を背ける。
「……君」
「マルス!」
そのタイミングで駆け寄ってきたのは赤い髪の男だった。
「ロイ」
「怪我は!?」
「まさかずっと見てたの?」
赤い髪の男、ロイは言葉を詰まらせる。
「……ごめん。俺、どうすればいいか……分からなかった」
マルスはじっと見つめていたが、やがて小さく息を吐き出して。
「いいよ。お陰であっちから顔を出してくれたみたいだし」
そう言ってマスターを見下ろす。
「君がこの部隊のリーダーかい?」