第一章
昼間からこってりしたものは食べられないので、ラディスは散々迷った挙げ句、冷やし中華を頼むことにした。今が春の終わり頃と思えば、悪くない選択だったと思う。
「……ファルコ、あまり脅かすなよ」
「あ?」
フォックスは席までそれぞれの飲み物を注いだコップをお盆に乗せて運んでくると、配りながら苦笑いを浮かべて。
「お前、不良だったろ」
クレシスは、にやり。
「よく分かったな」
「こういう目、してっからよ」
言いながらクレシスが自分の目尻を指でくいと吊ると、「てめっ」とファルコは肩を組み、腕でクレシスの首を絞めた。
「あがががっ……ギブ、ギブ!」
「あー、成る程」
「よしラディス。並んでろ」
次はお前だと笑うファルコに、ラディスは首を横に振って拒否。随分と愉快だな、とフォックスはくすくすと笑って。