第五章
気性の荒い王子様だなあ……
「っと」
接近したマルスの一太刀を後方に飛び退いて躱し、カービィは眉を顰める。
……服が切れた。ってことは。ガチで何考えてんのこの王子様、と少し呆れている隙にマルスは再び剣を振るい駆け出した。カービィは構えて。
「嘘に決まってる」
マルスはぽつりと声を洩らす。
「与えられた優しさも、希望も」
薙ぎ払われる剣。カービィは地面を蹴り出し、跳び上がって。
「そんなのは全部デタラメなんだ」
――こいつ。
くるくると宙を舞い、マルスの頭上を飛び越えて。着地し、地面を踏み込む音にマルスはおもむろに振り返る。直後、振り下ろされた剣に剣を交え、受け止めて。
「……何? あんた、うちのリーダーを否定しようっての?」
マルスは目を開いたがすぐに目付きを変えた。一体、どのタイミングで能力をコピーしたのかは知らないがカービィの姿は自分と全く同じだったのである。
「っは、そんな人間が本当にいると思ってるのかい?」
カービィはぎり、と奥歯を食い縛る。
「人間はいつだって自分に精一杯で――強い者に媚びを売る生き物さ!」