第四章-後編-
それにしても、今までの会話が筒抜けだったとは。
「ったく。気付くのが遅すぎんだよ」
「あはは……」
「ラディスはにっぶいからねぇー?」
和やかな雰囲気の中、何故か硬直している男が一人。
「……それって」
フォックスはぽつりと声を洩らす。――何故か、青ざめた顔で。
「俺が……ラディスを、こう……ぱーんってやったのも……」
沈黙。
「ああ、そういえば」
にこりと笑ってリンクは手のひらの上にぽんと拳を置く。一方のクレシス、その頃はまだ意識が戻っていなかったのであろう、怪訝そうに見つめて。
「何の話だ?」
「ちょっとしたハプニングというか。彼がラディスを」
「わああっ!」
すかさず、フォックスがリンクの口を塞ぐ。
「感度良好だったみたいだねぇ」
カービィはにやにやと笑っていたが、フォックスが睨みを利かせるとふいと顔を背けて口笛。――彼にだけは、知られるわけにはいかないのだ。
普段こそ彼に対してああいう態度ではあるが、あれも愛情の裏返し。なんだかんだ彼を慕っているのは明白。どんな理由であれ殴ったなんて口が裂けても――
「ああ! あれは痛かったな!」
ラディスゥウウ!?
「……は?」
「俺が悪いんだけどな。フォックスにこう、ぱーんと」
しかも具体的に伝えやがった。
「へえ……」
クレシスはフォックスをじっと見つめる。
「吊ってくる」
「いや落ち着けええ!」
「やっぱりあれはするべきじゃなかったんだああっ!」
本気で首を吊り兼ねないフォックスを必死に留めるマリオとファルコ。
「あいつ、お前と同じ匂いがするな」
「責任感が強いってことか?」
「いや。妙なところでへたれなんだよ」
――よくやった、って褒めようとしただけなんだがな。