第四章-後編-
そう長い時間が経たない内に、ダークリンクは姿を現した。
呼吸音は聞こえない。ようやくくたばったか、と思ったのも束の間、今更腹部に激痛が走ってダークリンクは傷口を手で覆い、その表情を歪ませた。
――くそ、脆いカラダだ。
人間といっても、彼はガノンドロフの魔力によって影で生成されている。
実体らしいそれも体力の消耗が激しく、実際の魔物と比べれば自己再生能力なんてものも殆ど当てにならない。その代わりに人間と同等の機能を持ち、影を自在に操るというほぼチート級の特殊能力まで持ち合わせているのだが……
「っか」
それにしたって、能力による体力の消耗が激しいせいで割に合っていないのだ。
ダークリンクは吐血すると、息を吐き出して。顔を顰め、何処かで回復を図ろうと踏み出したその時。異様な気配を感知し、勢いよく振り返った。
「……てめえ、どっから湧いてきやがった」
紫色の煙が充満しているこの部屋で、その相手の姿ははっきりと見えなかったが。
この感じは――
「随分と卑劣な真似をしてくれたものだ」
ダークリンクは口元を手の甲でぐいと拭って、目を細める。
「仇討ちかよ」
「勘違いをしてもらっては困る」
その相手とやらは一歩、踏み出して。
「お前と契約を交わしに来た」
――こいつ、何を考えていやがる。
ダークリンクは即座に断ってやろうとも考えたが、このままではそう長くない命なのだ。ここは奴の考えに乗ってみるのも悪くないかもしれない。
「……へえ」
ダークリンクはにやりと笑った。
「言ってみろよ」