第四章-後編-



……何かとは血に塗れ、ひくひくと動く塊だった。

ダークリンクは己の腹の中から取り出したその赤い塊を口元に運ぶと、皮らしきそれを食い千切って。適当な所に吐き捨て、中から金色に輝く鍵を取り出す。

「ほらよ。持っていきな」

カービィに投げ渡されたそれは当然のことながらべっとりと血が付いていて、その場にいた全員が声を失い、固まっていた。ダークリンクはにやり。

「どうした?」

――確かに、彼は本当の意味で狂っているらしい。

「別に。これが魔王のいる部屋の鍵?」

カービィが訊ねると、ダークリンクは素直に頷いた。

「……そこにある扉から大広間に出れる。幾つか部屋があるが、あんたらの腕なら然して問題はないだろうよ」

妙にぺらぺらと喋るので少し疑問を感じたが、彼もその怪我で追って不意を突けるわけでなければ、これ以上戦うこともできないと判断したのだろう。

これ以上口を閉ざしたところで、勝ち目は無いのだ。

「それって臓器? まさかそんなとこに隠してたとはね」
「ああ。……まさか寸止めとはな」

彼にしてみれば殺される覚悟あっての戦いだったのだろう。

傷口を摩るダークリンクを見つめ、カービィはようやく剣を鞘に納めた。とどめを刺してやるまでもない。この状態なら暫く危険性もないだろう。

それよりも急がなくては。そう思ってラディスは、自分は何を焦る必要があるのだろうと思い直す。魔王をどうにかしなくては、他の人間に害が及ぶ。


いや、違う。だとすれば自分は一体、何を焦っているんだ?
 
 
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