第四章-後編-
「あの時、何もできなくて……もし、俺のせいでクレシスが……っ!」
動きを取られてさえいなければ。
怖い。もし、屋敷に戻ってもクレシスがいなかったら。
笑ったり、怒ったり。いつも一緒で、それが当たり前だったのに――
「本当は……今、彼らの運命とかどうでもよくて……分かってる、こんなっ……最低だ……俺、しっかりしないと……リーダー、なのに……」
こんなにも自分を追い詰めていたなんて。
初めて、彼を小さく感じたのだ。フォックスはラディスの後頭部に片手を回すと、引き寄せるようにして彼の額を自分の肩口に乗せ、囁いた。
「そんなの、当たり前だろ」
ラディスははっと目を開いたが、ゆっくりと閉じて。
「あんなことになったんだ。本当はもっと、泣き喚いたっていいくらいなのに」
「……それは、さすがにしたくない」
「はは、そっか」
フォックスはくすくすと笑みをこぼす。
「……もっと頼ったっていいんだ。仲間だろ? 俺たち」
そう言って胸に手を置き、そっと押し返すとラディスは顔を上げた。
「ま、そうゆうこと」
「なに威張ってんだよ」
何故か誇らしげなカービィを、ファルコが肘で小突く。
「だからさ。一人で頑張りすぎるなよ」
色が戻ってくるような、そんな感覚を覚えた。クレシスへの不安が解消されたわけではない。それでも心の拠り所、大切な仲間の存在を知って。
「っ……あはは……ほんと……俺、かっこ悪いなぁ……」
――ラディスはようやく、本来の自分を取り戻すことができたのである。