第四章-後編-



「ラディス」

手首を掴まれ、振り返る。そこにはフォックスがいて、


――乾いた音が鳴り響いた。


「うっわ……」

カービィが苦そうな顔をして声を洩らす。……それもそのはず。フォックスは何を思ったのか、ラディスの頬を平手打ちしていたのだから。

「おいフォックス!」
「クレシスがいたら、そうしたんじゃないか」
「なに、言って」

いたらって――だって、クレシスは。


……クレシスは。


「しっかりしてるんじゃない。本当はお前、頭の中ぐしゃぐしゃだろ」

フォックスはラディスの両肩をぐっと掴んだ。

「戻ってこい!」

ラディスは目を開く。

「クレシス、どうなったと思う!」
「……ぁ」


じわじわとあの光景が戻ってくる。

赤い、血溜まりの中に突っ伏していたのは。……


――クレシス。


「っ……どうしよう、俺……!」

恐怖が。不安が。

重く、体に伸し掛かってくる。まるでその名前を引き金にして。


――ぷつんと糸が切れたかのように。
 
 
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