第四章-後編-
「……ラディス?」
剣を、刺して――
「ラディス、前っ!」
はっと顔を上げると、ゴブリンタイプの魔物がハンマーを振りかぶっていた。
フォックスとファルコが同時に拳銃を構えたが、彼らが発砲するよりも早くカービィは持っていた剣を投げつけて。それは見事、魔物の額を貫くようにして頭に突き刺さり、瞬殺。ハンマーを地面に落とし、ゆっくりと後ろに倒れた。
「……ぼーっとしてちゃ駄目っしょ」
カービィは溜め息を吐き出すと魔物の元へと歩み寄り、突き刺さったままの剣を引き抜いた。ぷしゅ、と緑色の液体が少量噴き出して、あーもう気持ち悪い、とカービィは魔物の頭を爪先で小突く。そして、おもむろに振り返った。
「ぁ」
違う。そこにいるのはカービィだ。
あいつじゃない。――だから、彼の後ろで倒れているのは。
俺の知ってるあの人じゃなくて。
「ラディス?」
ここでも、ラディスははっとしたように目を開いた。
心臓が忙しく鼓動を繰り返す。目の前で首を傾げるカービィを視界に捉えて、それから瞼を閉じた。大丈夫、しっかりしろと心の中で言い聞かせて、開く。
「……助かったよ。ありがとう」
「じゃなくて、平気なの?」
カービィが訊ねると、ラディスはくすっと笑った。
「当たり前じゃないか。リーダーなんだから」
そうだ。俺が一番、しっかりしなきゃいけないのに。
……なのに、違和感を感じる。なんで、俺は笑っていられるんだろう。
「ラディス……」
「時間、取らせたな。少し走ろうか」
そう言って、ラディスは背中を向けると踏み出した。