第四章-後編-



「分かっ、……いや」

マリオは眉を寄せて、視線を後ろに向ける。

まだ、クレシスの安否が確認できていないのだ。ここで治療を施すことができるのは自分だけ……救急の連絡もしたが、どうやら到着が遅れているようだし。

余裕がないのは同じなのだ。ここを離れるわけには――


「僕がやるよ」


マリオははっとルイージを振り返って。

「っ……そんなの、」
「無理じゃない」

ルイージはふっと笑いかける。

「皆もいる。それに、僕は兄さんの弟なんだから」

マリオは返す言葉も忘れていた。全く、こういう時に限って。その台詞を持ち出されちゃ、参るな……帽子の鍔を持って少しだけ下ろし、小さく息を吐き出す。

「この場は任せる。承諾だ、ラディス」
「すまないな」
「おいおい謝るなよ。本業はこっちなんだから」

ラディスはマリオに無線機を手渡す。

「場所は把握しているのか?」
「それには及ばない」

そう言って食堂に入ってきたのはマスターだった。

「アーウィン、だったか。マップデータを送信しておいた」
「随分と勝手だな」
「いらないなら使わなくて結構だ。迷子になるなよ」

マスターの返しに、ファルコはむっとして。

「ラディス。後の指揮は任せた。いけるな?」


大丈夫に決まっている。


「……ああ」

心配なんていらない。

俺は、リーダーなんだから――
 
 
18/82ページ
スキ