第四章-後編-
「……手間、かけさせたな」
「ふん。我が輩が勝手にやったことだ」
クッパはすっと立ち上がって、振り返る。
「借りを作ったなどと思い込むなよ。ヒゲに返される借りなんぞ御免だ」
「そっちこそ思い上がるなよ。感謝なんか誰がするかっ」
負けじとマリオがふんと鼻を鳴らすと、クッパは何故かふっと笑みをこぼした。
「マリオ。彼、大丈夫なの?」
「っバカ! 来るな!」
マリオが咄嗟に叫ぶと、ピーチはぴたりと立ち止まって。
もう少し遅かったら彼女の着ている裾の長いドレスが血溜まりに浸るところだったのだ。全く、こんな惨状を彼女の目に晒すことになろうとは……
「構わないわよ。こうするから」
「ああぁあっ!?」
ピーチはドレスの裾を摘まんで持ち上げると、そのまま踏み出した。結局は鮮血が跳ねてかかってしまうのに、ピーチは気にせずに接近。マリオは頭を抱えた。
どんな事柄にせよ、積極的なところは彼女らしい。
「それで。彼はちゃんと生きているのかしら」
「傷口を焼いたが、ぴくりともしなかったからな」
クッパはクレシスを見下ろして。
「……その」
マリオは気まずそうに視線を落とす。
「巻き込んで、ごめんな」
二人は顔を見合わせたが、からかおうとはしなかった。
「いいのよ。お安い御用だわ」
「全く。貴様と絡んでいると暇をしないな」