第四章-後編-
「……くっ」
まずい。血が、止まらない。
致命傷どころの騒ぎじゃないぞ、これは。医療をかじっていたマリオは、クレシスの治療に奮闘していた。傍らではルイージが心配そうに見つめている。
「気分、悪くなるようならいいんだぞ」
マリオは気を遣ったが、ルイージは首を横に振った。
「手伝えること、あったら言って」
――今朝、ハイラルに行った時はあんな気分悪そうにしてたのに。強がりやがって、とマリオは仕方なさそうな笑みを浮かべる。
「おいヒゲ」
その時、声をかけてきたのはクッパだった。
「何だよ。気が散るから向こう行ってろ」
「扱いの差が」
ルイージはあはは、と苦笑い。
「いいからそこを退け」
「っ、邪魔すんな!」
「手を貸してやろうというのだ、馬鹿者」
クッパは少し手荒にマリオを押し退けてしまうと、クレシスの傍らに跪いて。
「……あまり見ない方がいいぞ」
余計なお世話だ、と言うよりも先にクッパは手を翳した。
――次の瞬間。クッパの手から放たれた赤黒い炎が、クレシスの体を容赦なく襲った。慌てたルイージが止めようとしたが、マリオが腕で阻んで。
「兄さ、」
「いいから見てろ」
間もなくしてクッパが指を鳴らせば、炎はふっと消え失せて。当然、服も焼けてしまったが丸ごとではない。……どうやら、あれで傷口を焼いて塞いだらしい。
確かに無茶苦茶だが、そのお陰で出血は止まったようだ。