第四章-後編-
「……お前はどうする」
ラディスははっと顔を上げて。
「えっ」
「あれだけの痛手を負わされたんだ。此方からの出動は難しいだろう」
彼にしては珍しく、気を遣ってくれていたのだ。ラディスはそれまでうわの空だったが、しっかりしろと心の中で言い聞かせて。小さく、息を吐き出す。
「いや、構わない。此方から五人編成で出動する」
マスターは目を丸くしたが、興味深そうに、笑み。
「……ほう」
「彼らの狙いはあくまでトライフォース。深い関わりを持つリンクに関しては、屋敷で預かっててほしい。レイアーゼ都内の警備は厳重に、屋敷にも何人か派遣してもらった方がいいかもしれない。いつ仕掛けてくるか、分からないから」
長々と。淡々と。
それでいてラディスがきっぱり言い切ると、マスターもにやりと笑ってすぐに手を動かした。政府に今回の件について、協力を要請したのだろう。
「交通規制も。街の人間には緊急速報メールで通知した方が早いかもしれない」
「レイアーゼだけか?」
「……ああ」
ラディスはこくりと頷く。
「俺たちが守れるのはレイアーゼの人間だけだ」
――変だな。妙に頭がすっきりしてる。
マスターはくすっと笑みをこぼして。それから、足下の引き出しから何やら取り出し、机の上に並べた。……ちょうど五つ、小型の無線機である。
「こいつを持っていけ。使い心地は保証しないが」
ラディスはその内の一つを手に取った。
「……助かるよ。ありがとう」