第四章-前編-



クレシスは顔を顰めた。

……あの場で加勢していれば、両方が捕まっていた。だからといってあのまま棒立ちになるなんて、我ながら情けない。

ここを離れてマスターに事態を知らせるのが最善か。クレシスは一歩、後退して。


「――あんた、案外可愛いじゃん」


そう口を開いたのはカービィだった。

こんな時に何を、とクレシスは睨み付けたが、カービィは扉をしゃくってみせて。

……注意を引かせる作戦か。

「面倒くさいとか言いながらさぁ、魔王様にぞっこんでしょ。しっかり言うこと聞いちゃって、噂のツンデレってやつぅ?」

その言い種が勘に障るのか、ダークリンクはカービィの方を向いた。それがちょうどクレシスには背中を向ける形になって。

「……はあ?」

その隙にクレシスは横目で扉を視界に捉えつつ、ドアノブにゆっくりと手を伸ばす。

気付かれないよう、慎重に捻った。
 
 
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