エピローグ
線香の匂いが今は何処か優しく。薄く灰色の煙が昇るのを静かに瞼を伏せて。
「終わったのか?」
友の声に呼び戻される。
「……ああ」
ファルコは笑った。
「こうして肩を並べて拝んだのも十四年前のあの日だったな」
懐かしそうに。
「フォックスだけ泣かなかったわね」
「私も泣かなかったわよ」
「わ、私も泣いていません!」
「ゼルダったら泣きそうなくせに」
「それはピーチだって!」
くすくすと笑う声。
「フォックス泣いてたじゃん」
「カービィ!」
「あらやっぱり泣いちゃったの」
「やっぱりってなんだ!」
絶えず。
「俺たちの中で一番泣き虫だったろ」
からかう声に返す言葉もなく。
それは淡く優しく。
懐かしく。
「なぁフォックス」
ひと息ついた後でファルコが聞いた。
「寂しいか?」
今日何度目かの風が吹いた。
「ああ」
フォックスは息を吸って答える。
「寂しいさ。当然だろ」