エピローグ
そよ風に吹かれた髪を触れた。
「……髪」
視線を遣る。
「伸びたんじゃないか」
「貴方が言うの?」
リムは、三つ編みに結って腰の辺りまで流しているユウの後ろ髪を見つめる。
「切ってあげましょうか」
「勇者の剣をそんなことに使うな」
「ええやん減るもんやなしに」
「そうですよ」
「先代が泣くぞ」
リンクとドンキーに淡々とつっこみを返して小さく溜め息をこぼすユウの横顔を見つめてリムは微笑。
「……私たち」
静かに墓石へ視線を戻して、
「大きくなっちゃったね」
ねえ、ラディス。
私たちのこと覚えてる?
泣き虫は直ったかもしれない。
いい加減に悪戯も懲りちゃったし我が儘も言うより聞く側になっちゃったわ。
きっとこれから先も。
貴方を置いて変わっていっちゃうから。
……だから。
「きゃっ」
急に脇腹をつつかれたのではそんな声も出るだろう。
「なぁに感傷に浸っとるんや」
むうっと膨れたのも束の間。
「ぼやぼやしとったら置いてくで」
だから。寂しいなんて言わないでね。
……ラディス。
「置いてかれないわよ」
「随分と自信がお有りですね」
「私が一番速かったもの」
「ほんでユウが一番遅かったよなぁ」
「うるさい」