エピローグ



小さく目を開く。

「……ずっと考えてた」

少年は父が眠る墓石を振り返る。

「父さんのしたかったこと」


守りたかったもの。


「大好きだったんだよ」


それは。

世界よりも何よりも。


愛しくて。ずっと、大切で――


「自分勝手で無鉄砲で。巻き込みながら振り回しながら走ってきたつもりが……大きな声で、返ってきて」


こんな。こんな俺の声でも。

……届いてたんだ。


よかった。

俺は。


皆に会えて、本当に――


「幸せだったから」

少しずつ。

「充分……届いたから」

紡ぐ。

「……だから」


伝えるんだ。


「ありがとう」

柔らかな風が吹き抜けて。

「……皆」

少年は振り返る。

「僕と……父さんの」

なだらかに伝う透明な粒を落として。

「我が儘を聞いてくれて……ありがとう……」
 
 
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