エピローグ



影を差して俯せたままのその人に。

「簡単なことじゃない」

少年は。

「踏み出すことも、抜け出すことも」


……語りかける。


「精一杯迷いながら、後悔しながら……それでも戻ってきてくれたんだもん」

苦笑いにも似た笑みをこぼして。

「もう、充分戦ったよ」
「……でも」

フォックスは拳を握り締めた。

「ごめん」

……ぽつりと。

「俺は……俺たちは。一番守りたかった人を守れなかった。救えなかった」


あの日のことは忘れもしない。

出来たのがあいつだけで。


何も出来なかったのが俺たちで。


「今でも」

ずっと。頭の中で渦を巻いて。

上手く言葉にできないくらいには。


寂しくて。冷たくて。

今にも壊れそうなくらい怖くて――


「……違うよ」

少年は返す。

「大丈夫」

優しく笑いかけながら。

「そんなことないよ」
 
 
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