エピローグ
ずっと憧れだった。
誇りだった。今もそれは変わらない。
……でも。
「もう……やめようよ」
空気が冷たくなる。
「何、言ってるんだ?」
フォックスは乾いた笑みをこぼした。
「どんなに待ったところであの人は……父さんはもう戻ってこない」
ざわつく。
「面影を重ねても」
そっと瞼を下ろして閉じる。
「父さんは」
拳を握り締めて。
「もう――」
「違うっ!」
フォックスは叫び声を上げた。
「あいつはちゃんといる」
確かめるように。
「いなくなったりしない」
縋るように。
「だって俺たちはッ」
ずっと。あの日と同じ。
あの場所で――
「フォックス」
その人は静かに名前を呼んだ。
「……顔を上げて」