エピローグ



「遅かったね」

その人はくすっと小さく笑った。

「観光でもしてた?」

途端ぎくりと肩を跳ねて提げていた袋をさっと後ろに隠すメンバーもいたがこうして見られた後では時既に遅しといったところだろうに。

「お母さんとは話せたのか?」

フォックスが聞くと首を横に振って、

「ううん。家に居なかったんだ」
「……そっか」


風が吹き抜ける。


「じゃあこれが済んだら帰りに」
「――フォックス達は」

遮るように。

「何か変わった?」


そう口を開いたその人は。とても優しくそして儚い笑みを浮かべていて――


「色んなことがあったよね。辛いことも悲しいことも。それが霞むくらい楽しいことも……たくさん」
「ルーティ」
「父さんのこと」

小さく呼んだそれさえ遮って。

「ごめんね。聞いてたんだ」

フォックスは口を噤む。

「僕の中の父さんの記憶は幼いながらに乏しくてそれでもかっこよくて優しくて……ヒーローで」

すうっと息を吸って吐き出すように。

「凄く想われてるんだなあって思った」
「……ルーティ」
「同時に」

次いで寂しく。

「僕はあの人とは違う。あの人にはなれないって……思った」
 
 
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