エピローグ
声が。……皆の、声が。
……流れ込んでくる。
次に映し出された記憶の映像は何故かセピア色だった。映像はノイズを走らせながら青の映える男が液体の浸された円筒を見上げる様子を映し出している。その男が振り返った時、今度は赤の映える男が声をかけながら歩み寄ってきたが肝心の声が何故か聞き取れない。
でも。
「……そっ、か」
本当に愛していたんだ。
呑み込めない事実を引きずりながらそれでも生きてきた十四年間だったんだ。
父さんじゃなくて――
「……僕」
静かに頬を伝う。
「酷いこと言っちゃった」
あいつが生きていてくれるなら。
俺が、死にたかったよ――
「タブー」
ルーティはその名を静かに呼んだ。
「これは……父さんの記憶だね」
幼い瞳がゆっくりと見上げる。
「ずっと見てきたんだ」
父さんがしたかったこと。守りたかったもの。今なら分かる。
「ありがとう」
記憶の映像が突き抜けて遠ざかる。
「いいの?」
「うん」
ルーティは柔らかく微笑んだ。
「……多分もう、大丈夫だから」