エピローグ
……空白の時?
次の瞬間銃声が鳴り響いた。視線を戻すと目の前には、人だったものが散布する戦地が広がっていて。
「はっ……はっ……」
ルーティは小さく目を開いた。血溜まりの上で銃を手に喘いでいたのはフォックスだったのだ。
「きこえないよ」
声に出すよりも早く。
「これは、きおくだから」
言葉を呑んでそっと視線を戻した時ルーティははっとした。……フォックスはその手にしていた銃をおもむろに持ち上げると、そのまま銃口を自分のこめかみへと運んだのだ。
記憶だから。そう説明されたからにはこれは過去の映像であり現在あるものこそが証明且つ全てであるはずなのにフォックスの指が引き金に掛けられた時まさか本当に死ぬんじゃないかとルーティは青ざめた。
故に目を瞑ってその光景から逃れてしまいたかったが何故かそれが出来ない。……そのまま。フォックスは震える指で引き金を引いて。
「フォックス!」
程なく銃声が響き渡ったが声と同時弾が頭を貫くのは阻まれた。
……ファルコ。
「あいつを待つんだろ」
ゆっくりと顔を上げたフォックスを力強く抱き締める。
「お前が生きなくてどうするんだ」
滴る。
「死ぬなよ、フォックス」