エピローグ
これまで誇りに思ってきたあの人の意志を尊重するなら今目の前にいる双子を討つべきなのだろう。けれど昨日、フォックスの口から語られたあの人は想像とはまるで違う。
今まで英雄である父の背中を追ってきたつもりだった。未練があるならそれを代わりに果たしたかった。
……ねえ。
父さんが守りたかったのはこの世界じゃなかったの?
どうして双子を助けたの? あの時選択がもし違ったなら――父さんが生きていたなら皆も立ち止まらずに笑って過ごせていたのに。
今ある時が幸か不幸かは問わない。
でも。
「このままでいいはずない」
ルーティは固く拳を握り締める。
「本当は……分かりたいのに……」
十四年前。時を跨いで、今。空白の時間の重みも僕には分からなくて。
分からないことばかりで。
もう。
何が正しいのかさえ。
「えっ」
ルーティがそんな声を漏らしたのはその手をタブーが両手で包み込んだからだった。
「タブー」
程なくその双眸がそれぞれ赤と青の灯をともすのを目にマスターとクレイジーは小さく声を揃えて。