エピローグ
踏み出して。
ふと、赤いポストが目に留まる。
蓋を開いて確認してみると中には封筒がひとつ入っていた。そこで芽生えた悪戯心に突き動かされるがまま、ルーティはそれを取り出すと石畳みの上を飛び跳ねながら渡り、扉の前へ。
すうっと息を吸い込んでにやり。
「すみませーん。警察の者ですがー」
蛙の子は蛙というか。
「少しお話を伺いたいのですがー」
ノックの後、気持ち声低めに呼びかけてみるが応答なし。む……まさか居留守を使ってるんじゃないだろうな。
そう思って耳を澄ましてみたが、これが物音ひとつしない。そういえば今日は父さんの命日なんだし母さんもお墓参りに行ってるのかもしれないな。
となると。……拍子抜けだなぁ。
フォックスに言われてみるまで実家に帰るという選択肢が恥ずかしながらまるでなかったもので当然鍵は持ってないし、このままここで母さんを待つよりは先に皆と合流してお墓参りをして、それから帰りに寄った方が――
「……、」
振り返ったその時。
赤と青の双眸がきょとんと見上げた。
「ぎゃああぁああ!?」
叫ぶ声に。
小鳥がばたばたと慌ただしく飛び立つ。
「なっ」
ルーティは引き攣った顔で背中から扉に張り付いて。
「な、なんで」
声を震わせながら紡ぐ。
「なんで、タブーがここに……っ!」