エピローグ
手を合わせて元気よく。隣のピチカに続けるようにしてルーティは木製スプーンを手に取ると汁粉と白玉を同時に掬い、ついでとばかりにバニラアイスとホイップクリームまで攫って口に運んだ。
「……んー!」
なんて声を揃えたのは今度は同時。
「おいしー!」
冥利に尽きる、なんて言葉はまさしくこの善哉を作った人のためにあるのだろう。もしかしたら厨房でガッツポーズをしているかもしれない。
「そぉいや」
スピカは頬杖を付きながら。
「十七の誕生日おめでと」
「、そうだったのか」
ダークウルフはわざわざ食べる手を止めるとわざとらしく咳払いをして背筋を伸ばしながら。
「おめでとう」
「あはは、ありがとう」
「言っとくけどこれ別に誕生日プレゼントのつもりとかじゃねーから」
「リーダーの誕生日はいつなんです?」
「教えるかよ」
何を隠す必要があるのやら。
「にぃにの誕生日はねー」
「あ、こらっ」
風鈴の音。カランと氷の揺れる音。
瞼を閉じればまだ耳に残る。
僕らの夏は。
まだ始まったばかりだ。
「リーダーの誕生日は是非祝わせてください」
どうやらばれてしまった様子。
「勝手にしろ」
「はい。勝手にします」
微笑ましいことだ。
「この通りの近くにあるアイスクレープ、すっごく美味しいんだよー!」
「えっ。まだ食べるのピチカ?」
「それはそれ!……はむっ……こぇはこえ!」
一口頬張ってもごもごとさせながら。
女の子の胃袋は思った以上に計り知れない。
「にぃにもいこーよ!」
「し……しょうがねぇな……」
大好きな妹に構ってもらえるのがよっぽど嬉しいのであろうスピカが断る理由などあるはずもなく。
「わ、分かったよ」
お前も来るだろ、とばかりに視線を刺されたのではこれまた断れるはずもないわけで。
「ぼんやりしてたら夏、終わっちゃうよ!」
ピチカは幸せそうに食べ進めながら。
「まだまだ満喫しなきゃねっ!」
明日も。明後日も。
眩むような陽の光を浴びながら。
僕たちは相変わらず。この世界のために。
……これは。
この世界を守るべく戦う戦士たちに与えられた。
かけがえのない。──
「あっ! おにぃ溶けちゃうよ、アイス!」
「頭がキーンとしてきた……」
「だっらしねーなぁ」
「リーダー結べましたよさくらんぼの茎」
「お前は男子中学生かっ!」
くすくすと笑うルーティにピチカが笑いかける。
「また行きたいね、海っ!」
「……うん!」
「今度はにぃにと……ダークシャドウの皆も一緒に行こうよ!」
「俺たちはその、命に関わるんで……」
「砂浜に墓建てといてやるよ」
「、リーダー!?」
「あははっ」
来年も。……また。
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