エピローグ
インフォメーションカウンターは何処だろうと見回していれば不意に繋いでいた手が離れて。あっ、と小さく声を洩らすルーティを置いて男の子がぱたぱたと駆け付けた先にはスポーツウェアに身を包んだ色白の一人の女性。男の子はちょうど背中を向けていたその人の正面に回り込んで自分の存在に気付かせると勢いよく抱き寄せられて──されるがまま。ルーティは目を丸くする。
よかった。会えたんだ──そうして暫く見つめていると気付いた女性が振り返って微笑みかけながら小さく頭を下げた。釣られて返せば今度男の子が手を振るのでそれにも応じて。
これにて一件落着──というわけにもいかない。こっちはこっちであの少年を探し出さないことには最終的な目標を達成できない。一先ず男の子の家族(と言うには似てなかったが)が見つかってよかったと安心しながら改めて辺りを見渡してみれば先程まで探し求めていたインフォメーションカウンターがそこにあった。探し物って探してる時は見つからないけどどうでもいい時にぽろっと出てくるよね、それと同じなんだ、なんて思っていると。
「……ん?」
いやなんかいるううううっ!?
「背は少し低いくらいで──」
しかもなんか失礼なこと言われてる!
「ああああっ、あのっ!」
まさかあの少年が今まさにインフォメーションカウンターで自分の特徴を受付の女性に伝えている場面に出会すものだとは……ルーティが慌てて声を掛けながら駆け寄り肩を掴めば。
「あ」
振り返った少年は目を丸くして。
「僕、迷子じゃ……」
必死の弁解も気にも留めずにぽつりと。
「……いた」
自動ドアが開く。
「成る程。そうだったのか」
何があったのかを説明すれば納得はしてくれたものの、やはり断りなくあの場から動いたことで少年に心配をかけてしまったようで。
「ごめんね。心配させて」
「いやまったく。気にしないでくれ」
まさしく真夏の太陽のように眩しい少年の笑顔に大袈裟にも眩みそうになる。
「それに」
少年はルーティをじっと見つめながら。
「君がどういう人なのか分かった」
……?
「そ、それってどういう」
「さてどうかな」
意地悪だ!
「いい意味だよね?」
「そう捉えてもらって構わないよ」
ああ言えばこう言う!
「ほら」
少年は膨れるルーティを無視して指差しながら。
「あれが例の司令塔だろう?」