エピローグ



ようやく。司令塔が近付いてきた。

このまま歩いていても問題なく司令塔には辿り着くのだが手持ちの飲み物が空になる都度買っていたのでは出費が嵩むということで少しでも暑さを凌げるようにデパートの中を突っ切って行くことにした。やはり同じような考えの人は多いようでデパートの中は入り口の時点で賑わっている。待ち合わせ場所として使っている人や買い物袋を持たずに出ていく人もちらほら──

「今から十五分間衣類に限り半額セール開始でーす!」


へっ?


「うわあああっ!?」

メガホンを手に衣料品売り場の女性店員が声を張り上げたかと思うと──あっという間だった。

待ってましたとばかりに至る所から人が飛び出してきて阿鼻叫喚のおしくらまんじゅう。まさかここにきて巻き込みを食らうなんて……ルーティは人波に溺れてしまいそうになりながらも何とか少年の腕を掴むと人混みを掻き分けて抜け出ることに成功。

「だ、大丈……」

大袈裟に肩で息をしながら振り返れば。

「……え」


誰ぇええぇえ!?


「ぁ……あ、あれっ……?」

ルーティが咄嗟に腕を掴んだのはあの少年ではなく茶髪でショートヘアの男の子だった。自分でも全身から血の気が引いて、顔が青ざめるのを感じながら手を離せば男の子はきょとんと首を傾げて。

「……誘拐?」
「ちちち違う! 違うから!」

吃った方が怪しいというのに。

自分ときたら。

「そう」

それでもすんなり納得はしてくれたようで男の子はぽつりと返した。ルーティはもはや誤魔化すつもりもない乾いた笑みを浮かべながらぎこちなく人混みを振り返って遠目に見つめる。……うぅん。とてもじゃないが飛び込む気になれない。

「え」

不意に服の裾を引かれた。

見れば、何やら男の子がじっと見上げている。何かあるのだろうかと疑問符を浮かべながら、

「……どうしたの?」


嫌な予感がする。


「お母さんは?」
「いない」
「お父」
「いない」

察しがつく。ついてしまう。


これは。もしかして──もしかしなくても。


「迷子ぉおっ!?」
 
 
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