最終章
「脱ぐな」
速攻リオンを蹴り転がすユウを他所にルーティは近寄ってきたシフォンにマイクを渡されてしまいいよいよ後がなくなった。
「ええーっ僕もう曲入れちゃったよ?」
ローナが不服そうに唇を尖らせる。
「えっと……何を入れたの?」
「『胸キュン☆まじないプリティカル』!」
いやいやいや!?
「どうしてもってならしょうがないなー」
「僕そんなの歌えないよ!?」
「まあそう遠慮せずに」
「してないよ!?」
そうこうしている内に無慈悲にも賑やか且つ可愛らしい前奏が始まってしまうのだから焦りと共に羞恥心が募る。この曲は確か毎週日曜日の早朝に放送されている女児アニメのオープニング。知らないというわけではないが歌うのは遠慮したい。
「しっかたないなー」
ローナは二つ目のマイクを握りながら。
「僕がハモってあげよう!」
「どうしても歌うこと前提なんだね?」
「ほら始まるよ!」
「わわ!……ど、どきどき、きゅるるん……!」
めちゃくちゃ恥ずかしい。
「ルーティーッ!」
「お前酔ってんのか?」
「俺は本気だッ!」
本気と書いてマジと読む。厳つい表情で振り返って答えた後に向き直り握った拳を振り上げて応援するフォックスにファルコは呆れ顔。
「オリマー、曲は入れたのか?」
「私は聞く側の方が性に合ってるからね」
喧騒からは離れた位置にある椅子にのんびり腰掛けながらグラスに注いだウイスキーの酌み交わすのはファルコンとオリマー。
「俺も同席していいかな」
差す影に二人は顔を上げて目を丸くする。
「……レッド」