最終章
そういえば。あのガノンドロフでさえ今回プレゼントされたアルバムに手書きメッセージを書いてくれていたのだった。
他より簡単で短い文だったのはそれはそれで印象的だったのだが彼の生い立ちや性格を思えば本来はそれすらも無かったのではないか。となればクッパ辺りに煽られて意固地になったのかはたまたリンクに詰め寄られて渋々と筆を取ったのか……
「、!」
そんなことを考えながら歩いていたルーティだったが不意に服の裾を後ろからくいと引かれたような気がして立ち止まった。疑問符を浮かべながら振り返ってみるも誰も見当たらない。
「……?」
そうして。更に疑問符を散らしながらゆっくりと前に向き直れば。
『誕生日おめでとう』
「なのデス」
声出るかと思った。
「っ……ど、どうも……」
そこに居たのはお馴染みスケッチブックにでかでかと文字を書いて大きく掲げるゲムヲと直立不動無表情のロボットだった。
いやまさか気配も何も感じないだなんて──でもそれは彼らが揃いも揃って普通の人間ではないからであって生き物特有の正気とか存在感を放たないのは至極当然──いやいや、等と頭の中でぐるぐると洗濯機かのように言葉を巡らせていれば。
『大きくなったね』
次いでゲムヲが見せてくれた文章に。ルーティは思わずハッと目を開いた。
「……そっか」
温かみのあるセピア色の情景が。
柔らかく浮かび上がる。
「ゲムヲは……まだ小さかった頃の僕に、会ったことがあるんだっけ」