第八章
「っお前」
声を上げたのは男の方だった。
え、知り合い? そう思って振り返るが対するピチカは怯えている。深く突っ込まないようにしようと向き直ると、男たちは酷く慌てた様子でバイクに乗り込み、早々にエンジンをかけた。っておいおい。これじゃ逆じゃないか。
「……おいちょっと待て!」
あっ、と声を洩らした時には遅く。
次々と発進していく、そんな中で最後まで運悪くキーが見つからずにバイクに跨った姿勢のまま、あたふたとしていた男を駆け出したソニックがぎりぎり捕らえることに成功した。男の腕を掴み、睨みつけて。逃げるな、とでも言うように。
「っ……は、離せ!」
「まずは落ち着いて話を聞こうじゃないか」
目が笑っていない。
「お、俺たちの方が被害者なんだ! 兄貴は病院送りにされるし!」
「そうやって、また慰謝料を要求するつもりでしょ! 騙されないんだから!」
立場的に優勢と見たのかピチカが顔を出して言い返す。
「嘘だと思うならお前らの保護者とやらに聞いてみろってんだ!」
――保護者?
「あのー、それって」
ルーティは疑問を口にする。
「金髪の男の人、いませんでした? 緑が似合いそうな」
「やっぱり知ってるじゃねえか!」
声を荒げる男を差し置いて、ルーティは納得する。……そっか。
「ピチカ」
ルーティは微笑して。
「よかったね。優しい人たちで」