第六章
「水飛沫を上げて、いざ出陣! さぁさ、僕に挑戦する無謀な勇者クンは」
「何やってるの?」
ルーティが声をかけると、ローナは右手に小さな椀、左手にポイと呼ばれる金魚を掬う道具を手にぱっと振り返り、よくぞ現れたとばかりに瞳を輝かせた。
「おお! 挑戦するなら一回百円だよ!」
「え、だから何を……」
「あら。それは簡単なことなのだわ」
現れたのは彼女の保護者兼姉であるシフォン。ふふ、と何故か意味深に笑って。
「この屋台を見れば分かるでしょう」
「金魚すくいかぁ。ええなあ」
ドンキーは腕を組んで。
「ええ。ローナと勝負しようって勇者クンを募集してるのよ。どうかしら」
「よし! せやったら俺が」
「ストップ」
名乗り出ようとしたドンキーだったが、すかさずリンクに止められた。といっても、猫のお面を付けていてはいくら真剣な声色でも緊迫感も何も無いのだが。