第六章



「もっかい!」
「その辺にしといたらどうですか?」

型抜きの屋台の前に屈んで腕を振り上げるドンキーに、呆れたように声をかけるのはリンクである。すると、ドンキーは唇を尖らせ、不服そうに振り返って。

「やって、上手く抜けへんもん」

リンクは腕を組み、見つめていたが。

「……時々子供っぽいですよね」
「悪かったな」


結局、リンクが言った通りに型抜きは諦めて、二人は肩を並べて歩いていた。

「……あの」

リンクの方から話を振ってくるとは。

特に決まった話題もなかったのでドンキーは顔を向けると、「何?」と返して。

「彼女のことですが」

リンクは続けて。

「……好きでしたか?」

彼女、というのが誰を指しているのかは大体分かる。ドンキーはふいと顔を背け、屋台やすれ違う人間を適当に眺めて。
 
 
24/38ページ
スキ