第五章



「ねえ。ちょっと、あれ」

建物の影から子供達を窺っていたリムが、不意に口を開いた。直前まで帰ろうとしていた四人も、さっと子供達に注目して。

分かれ道でもないのに、何故か子供達が立ち止まっている。誰かと話しているようだが、傘が邪魔をして上手く見えない。

「ここからじゃ声も聞こえないな」
「もう少し接近してみましょう」

雨音に足音を掻き消してもらいながら、五人は揃って子供達の近くに移動する――


「え、トイレ?」

ディディーは小首を傾げて。

「そうそう。おじさん、急に催しちゃってねぇ。何処にあるか知らないかなぁ」

明らかに怪しい。

ベレー帽を被ったその男は小太りで、サングラスにマスクを着用。全体的に黒い衣装を身に纏っていて、怪しさ全開。

人を変な風に疑うのはよくないが、人通りの少ない場所で子供にトイレの場所を聞くとは、なんて清々しい不審者っぷり。
 
 
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