第四章
子供達の騒ぎ声やシャワーの音で、誰もこんな状況になっていることに気付いていない。目の前の鏡を見てみると、マルスは不適にも口元に笑みを浮かべていて。
不思議と心臓が高鳴っていく。上手く言葉が出ずに、ただ、押し黙っていると。
「知りたくないのかい?」
マルスは胸板にもスポンジを滑らせて。
「君が溺れた後のこと」
揃いも揃って何を隠す必要があったのかは知らないが、自分が最も気になっていたことだ。ルーティは静かに、頷いて。
「……実はね」
マルスはにこりと笑って、話し始める。
「初めに、ルーティを助けに海に入ったのはフォックスとウルフだったんだよ」
ルーティは思いの外、目を丸くして。
――フォックスはともかく、ウルフが助けてくれるなんて。今、この場にはいないみたいだけど、後でちゃんとお礼を言おう。