第四章
あんなことがあったんだ。
次に目を覚ましたら、そこは天国かもしれない。何故かそう思い込んでいた。
「……っ、う」
小さく呻き声を洩らし、ゆっくりと瞼を開く。真っ先に視界に飛び込んできたのは見覚えのある天井。そして、潮の匂い。
顔を横に向けてみると、やはり窓が開いていた。潮風にそよぐカーテンの向こう側で空は橙色に染まり、日没を告げる。
「起きたか?」
ベッドの縁に腰掛け、ルーティの髪を優しく撫でながら顔を覗き込んだのはフォックスである。隣には、ロイが寝ていて。
「フォックス」
「っと。あまり無茶はするなよ」
ルーティは思わず上体を起こしたが、まだ頭がくらくらする。フォックスに背中を支えられながら、ルーティは頭を抱えて。
「……どのくらい、寝てたの?」
遊び呆けるつもりが、とんでもないことになってしまった。せっかくのバカンスだというのに、自分が本当に情けない。