第三章
「……あ、財布」
程無くして一人海の家に辿り着いたルーティは、ようやく自分が財布を持ってくるのを忘れたということに気付いた。
まあ、当初の目的はかき氷ではなく、ウルフ捜しなので良しとしよう。とはいえ、かき氷の旗を目の前にこれは情けない。
「うぅ。……ひ、わっ」
悔し涙をぐっと堪えつつ立ち尽くしていたその時、ルーティは何者かによって背中を指でつつかれ、慌てて振り返る。
そこにいたのはゲムヲだった。
どうやら、ビーチフラッグ対決で負けたらしい彼は、運が良くも悪くもパシリにされてしまったらしく、右手には財布。
……とはいえ、普段は喋らないゲムヲ。
「えっと。僕が代わりに言おうか?」
ルーティが提案すると、ゲムヲは嬉しそうに大きく頷いて。これでかき氷は確保だな、とルーティは密かにガッツポーズ。
――それよりも。
十八歳以上限定のビーチフラッグ対決に参加できる彼って一体……何歳なんだ。