第二章
「っやめてください! アイ」
「本物の彼らに、君の声は届かない」
ベンゼルはニヤリと笑って立ち上がると、タクトを構えた。するとダークリンクは入れ替わりに切り株の上に腰掛け、懐から焦げ茶色のオカリナを取り出す。
ダークリンクがオカリナの吹き口に唇を添えて瞼を瞑ったのを合図に、ベンゼルはゆっくりとタクトを振り、演奏を始める。
「っ……あ」
優しく、温かなメロディがリンクのありとあらゆる記憶にそっと触れていく。
目の前に映し出される、倒してきた数々の魔物の死に様。その嘆きが、憎しみが、声となり音となってリンクの脳内に響き渡る。じんと頭が熱くなり、激痛が走る。
「ああぁあああッ!」
森に響き渡る、悲痛な叫び声。
驚き、木々から鳥達が飛び立つ。事情も知らないまま、茂みから兎が顔を覗かせて。