第二章
「どんな夢だったんだよ」
ウルフが訊ねると、ルーティはようやく瞼を開いて、枕を抱き締めながら。
「ピエロが……包丁振り回しながら追いかけてきて……しかも、撒いたと思ったらマンホールから顔を覗かせてたり……」
そう話している間も、ルーティの体は微かに震えていた。悪夢に怯えるこの少年が、世界を救った人間だと誰が思うだろう。
「……ね、ウルフ」
ルーティは枕を傍らに置いて布団を捲ると、ベッドから下りてウルフの元へ向かい。
手を後ろに回しては指を絡ませ、妙にもじもじしながら何処となく気まずそうに。
「一緒に寝ちゃ……駄目かな」
ウルフはふんと鼻を鳴らし、背中を向けると「好きにしろ」と一言。ルーティは遠慮なく、彼の布団の中へ潜り込む。
「へへ……あったかい」
ルーティはくすくすと笑いながら、ウルフの代わりにふさふさの尻尾に抱きついた。
眠気はすぐに襲ってきて。
「おやすみ、ウルフ」
「……ああ」
二人はそうして、瞼を閉じた。