エピローグ
「……ねえ、兄さん」
同じ頃、エックス邸の屋根の上でマスターとクレイジーは腰を下ろしていて。
「どうした」
あの後、マスターも無事に洗脳が解かれ、自我を取り戻していた。
タブーはというと、ベンゼルも力を使い果たしていた彼に興味は示さなかったのか、あのまま取り残されていたらしく。
「あいつ、結局何だったんだろうね」
事件の首謀者である、ベンゼルのことだった。悪魔とは呼ばれていたが、実体を持たない彼が本当にそうだったのか否か……
今となっては、定かではない。
「……クレイジー」
マスターは静かに口を開く。
「人間はいつだって、自分を楽しませる為なら何だってしてやれるんだ。それは時として正義でもあり、悪でもある……」
「ふふっ……じゃあ、もしかして」
クレイジーはくすくすと笑いながら。
「あいつ、人間だったのかもね」
希望も、絶望も。
生み出すのは人間だ。
もしかしたら、この世界も既に。
とある物好きな人間の手によって綴られた、一つの舞台だったのかもしれない――
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