エピローグ
「好き嫌いは駄目なんだからな」
「それを貴方が言いますか」
二人のやり取りを目に口元に笑みを浮かべつつ、早速席に運ぼうとお盆の両端に手を伸ばし、掴む。持ち上げようとして、ルーティは朝食を目に静止した。
「……ウルフ」
名前を呼ばれると、ちょうどお盆へ手を伸ばしていたウルフは視線だけ寄越して。
「僕、どのくらい寝てたのかな」
目を開いたのはウルフだけではなかった。
「ルーティ」
「凄く……疲れてたんだね。丸一日は寝ていた気がする。最初、分かんなかったよ」
いつの間にか食堂は静まり返ってしまっている。誰もが耳を傾けていたのだ。
「肩の傷、すっかり無くなっちゃってたから。それに加えて、丸一日近く寝てたんでしょ。あれは、長い夢だったのかなって」
「ルーティ」
先程から呼びかけているのはウルフである。まるで静止させようとするみたいに。