最終章
何故。そんな、嘘に決まっている。
「悪夢から逃れられるはずがッ」
「違うわ」
リムは歌を口吟むのを止めると、口を開いた。この状況に誰より驚愕し、戸惑っているベンゼルを鋭く睨み付けて。
「貴方のそれは、音楽じゃない」
「何っ」
「音楽は、例え人を虜にしたのだとしても、それによって絶望なんか生み出さない」
ベンゼルは顔を顰めた。
「そんなのは」
「知ったような口を!……人間よ。今の世界が奏でている歌が、美しいと思うか?」
「いいえ。それでも」
リムは続ける。
「音楽は、その為にあるんじゃない」
ベンゼルは一層顔を顰めた。
「絶望を払い、希望を乗せて……様々な表情を見せながら、人々に届ける。それぞれちゃんとした意味が込められている……」
リムははっきりとした口調で。
「それが、歌よ」