第七章



「っ……返、して」

ルーティはぐっと拳を握り締め、声を洩らして。何処かで見ているはずのベンゼルも今は口を閉ざし、その声に応えない。

「返して……っ返してよ……!」

まるで、子供が駄々を捏ねるように。

泣き腫らしたい気分のはずなのに涙は零れず、ただ、ルーティは悲しみに暮れて。

「僕の! 大切な仲間を! 今すぐ」
「ああ。返してあげよう」

ルーティは目を開いて。

次の瞬間、ルーティの足下を起点に純粋に真っ白な世界が広がった。一人、ぽつんと立ち尽くしていると、足音が聞こえて。


「ルーティ」


その声に、ルーティはばっと振り返った。

そこにいたのはフォックスである。そんなはずはない、と疑うよりも先にフォックスは一歩踏み出し、口を開いて。

「お前のせいだよ。何もかも」
 
 
54/59ページ
スキ