第七章
しつこく付き纏う奇怪な音楽に、ぐらりと視界が歪む。このまま眠ってしまおうか、なんて考えは急いで首を横に振っては振り払い、夢中で廊下を駆ける。
――音が、近い。ウルフは顔を上げて。
大ホールだ。開いた扉の隙間から光が漏れている。奇怪な音楽も……ウルフは息を軽く弾ませながら、大ホールへ飛び込んだ。
「っ……は……」
途端に奇怪な音楽は止み、ウルフは数歩歩いた先で跪いた。とりあえず、壁際にピチカを寝かせて小さく息を吐き出す。
「ほう。狼が鼠を拐ってきたか」
大ホールの中心。バイオリンを手にしていた男はウルフを視界に捉え、微笑。
「ここで貪ってくれても構わないのだよ」
――化け物。
一目で錯覚した。この男は、他のダークシャドウとは違うオーラを纏っている。
ウルフはゆっくりと立ち上がると、いつ攻撃を仕掛けられてもいいように右手をホルスターの拳銃に宛がい、構えて。